アンドロゴ_トップページリンク アンドロゴ_トップページリンク 秋号 No.199

九州 老舗名店探訪

長年愛され続ける名店を訪ねて
熊本市

山本屋食堂

140年以上の歴史を紡ぐ
6代目に受け継がれる食堂
山本屋食堂店舗
▲創業以来、変わらぬ場所で営業を続けている
1967(昭和42)年の店舗 ▲1967(昭和42)年の店舗
1992(平成4)年の店舗 ▲1992(平成4)年の店舗

明治時代に開業して大繁盛
馬肉と鯖の料理が人気に

西南戦争が勃発した1877(明治10)年頃に創業した山本屋食堂。当時、向かいには米の集積場があり、農家の人たちが米俵を運んできていました。阿蘇や菊池から荷馬車を引いてくることも多く、大変な重労働だったといいます。初代・山本勘次郎(やまもとかんじろう)さんは、力仕事を終えた後にお腹を満たす食堂として、お店を営業していました。提供したのは、手に入りやすく安価だった馬肉や鯖を使った料理。米を納めて得た現金を手に山本屋を訪れ、食事をするのが農家の人たちの楽しみだったそうです。多くの客でにぎわい、活気にあふれていました。

明治時代に発行された営業許可証 1967(昭和42)年の店舗 1992(平成4)年の店舗

看板メニューはごはんに馬肉の甘辛煮をのせた肉丼と鯖の煮付け定食でしたが、太平洋戦争が始まると、米の入手が困難に。代わりにそば粉を仕入れ、自家製そばの提供を始めました。

140年を超える歴史の中で、店舗も変わっていきます。
創業時の店舗は西南の役で焼失。廃材を集めて建て直し、増築を重ねて営業を続けました。1999(平成11)年、1階に食堂、2階に和室の宴会場を設えた現店舗へ建て替えられました。

明治時代に発行された営業許可証
店内の様子
▲テーブル席がメインで、座敷席もある
「松花堂弁当」1,280円(税込) ▲「松花堂弁当」1,280円(税込)

昔ながらの味わいが魅力
丁寧に手作りされた伝統料理

メニューは、そば・うどんや丼、定食、一品料理などで、60種以上がそろっています。
伝統の馬肉甘辛煮は、深いうまみが口いっぱいに広がる逸品。柔らかくホロホロで、程よく残る食感が絶妙です。1度炊いた後に冷まし、食材の状態を見極めながら二度炊き、三度炊きして丁寧に仕上げています。
鯖の煮付けは、ふっくらした身に煮汁が染みたコクのある味わい。継ぎ足し続けている秘伝のタレが使われています。

馬肉甘辛煮と鯖の煮付け、どちらも楽しみたいなら、「松花堂弁当」がおすすめです。松花堂弁当には、他にも定番人気の惣菜やだし巻き卵など、“山本屋のオールスター”がひと箱に詰め込まれています。

「松花堂弁当」1,280円(税込)

まかないから生まれた名物や
オリジナリティが高いメニューも

「雪見丼」1,180円(税込)

元々はまかないで、今ではお店の名物となっているのが「雪見丼」です。大和芋に卵の白身を混ぜて、だしで味付け。馬肉甘辛煮をのせた「肉丼」にかけ、黄身を加えていただきます。たっぷりの馬肉がふわふわとろろに絡まり、ご飯との相性は抜群です。

「そばサラダ」1,000円(税込)

また、「そばサラダ」は人気メニューの一つ。そばの上には甘い卵焼きとたっぷりの野菜がのっています。自家製ドレッシングを麺つゆで割ったタレが、味の決め手です。

創業から140年超もの間、地域に根差して営業する山本屋食堂。現在は、6代目の山本徳系(やまもとのりつぐ)さんが受け継いでいます。一つ一つの食材に向き合い、昔ながらの味を大切にした料理を手作りする日々。「これからもこの場所で、変わらず親しんでいただけるお店でありたい」と話す徳系さん。店内には、4世代で来る家族や、帰省の度に訪れるお客さま、昔を懐かしみ数十年ぶりに訪れるご年配の方など、さまざまな姿が。時代が移ろい、街の様相が変わっても、同じ場所に在り続けてきた老舗食堂。歴史に思いをはせながら、昔ながらの料理をしみじみと味わいたいお店です。

店主の山本徳系さん 甘辛く煮た馬肉をご飯にのせた「肉丼」850円(税込) 店の奥には小さな庭がある
山本屋食堂の地図

山本屋食堂

  • 住所

    熊本市中央区南坪井町7-10
    [ GoogleMap ]

  • 電話

    096-352-2900

  • 営業時間

    11:00~21:00(LO20:30)

  • 定休日

    不定休、年始

  • アクセス

    熊本電鉄「藤崎宮前」駅すぐ

  • Instagram

    @20150221yamamoto

※掲載している情報は、2025年9月24日時点のものです。