九州 老舗名店探訪
山本屋食堂
6代目に受け継がれる食堂

▲1967(昭和42)年の店舗
▲1992(平成4)年の店舗
明治時代に開業して大繁盛
馬肉と鯖の料理が人気に
西南戦争が勃発した1877(明治10)年頃に創業した山本屋食堂。当時、向かいには米の集積場があり、農家の人たちが米俵を運んできていました。阿蘇や菊池から荷馬車を引いてくることも多く、大変な重労働だったといいます。初代・山本勘次郎(やまもとかんじろう)さんは、力仕事を終えた後にお腹を満たす食堂として、お店を営業していました。提供したのは、手に入りやすく安価だった馬肉や鯖を使った料理。米を納めて得た現金を手に山本屋を訪れ、食事をするのが農家の人たちの楽しみだったそうです。多くの客でにぎわい、活気にあふれていました。
看板メニューはごはんに馬肉の甘辛煮をのせた肉丼と鯖の煮付け定食でしたが、太平洋戦争が始まると、米の入手が困難に。代わりにそば粉を仕入れ、自家製そばの提供を始めました。
140年を超える歴史の中で、店舗も変わっていきます。
創業時の店舗は西南の役で焼失。廃材を集めて建て直し、増築を重ねて営業を続けました。1999(平成11)年、1階に食堂、2階に和室の宴会場を設えた現店舗へ建て替えられました。
▲「松花堂弁当」1,280円(税込)
昔ながらの味わいが魅力
丁寧に手作りされた伝統料理
メニューは、そば・うどんや丼、定食、一品料理などで、60種以上がそろっています。
伝統の馬肉甘辛煮は、深いうまみが口いっぱいに広がる逸品。柔らかくホロホロで、程よく残る食感が絶妙です。1度炊いた後に冷まし、食材の状態を見極めながら二度炊き、三度炊きして丁寧に仕上げています。
鯖の煮付けは、ふっくらした身に煮汁が染みたコクのある味わい。継ぎ足し続けている秘伝のタレが使われています。
馬肉甘辛煮と鯖の煮付け、どちらも楽しみたいなら、「松花堂弁当」がおすすめです。松花堂弁当には、他にも定番人気の惣菜やだし巻き卵など、“山本屋のオールスター”がひと箱に詰め込まれています。
まかないから生まれた名物や
オリジナリティが高いメニューも

元々はまかないで、今ではお店の名物となっているのが「雪見丼」です。大和芋に卵の白身を混ぜて、だしで味付け。馬肉甘辛煮をのせた「肉丼」にかけ、黄身を加えていただきます。たっぷりの馬肉がふわふわとろろに絡まり、ご飯との相性は抜群です。

また、「そばサラダ」は人気メニューの一つ。そばの上には甘い卵焼きとたっぷりの野菜がのっています。自家製ドレッシングを麺つゆで割ったタレが、味の決め手です。
創業から140年超もの間、地域に根差して営業する山本屋食堂。現在は、6代目の山本徳系(やまもとのりつぐ)さんが受け継いでいます。一つ一つの食材に向き合い、昔ながらの味を大切にした料理を手作りする日々。「これからもこの場所で、変わらず親しんでいただけるお店でありたい」と話す徳系さん。店内には、4世代で来る家族や、帰省の度に訪れるお客さま、昔を懐かしみ数十年ぶりに訪れるご年配の方など、さまざまな姿が。時代が移ろい、街の様相が変わっても、同じ場所に在り続けてきた老舗食堂。歴史に思いをはせながら、昔ながらの料理をしみじみと味わいたいお店です。

山本屋食堂
-
住所
熊本市中央区南坪井町7-10
[ GoogleMap ] - 電話
-
営業時間
11:00~21:00(LO20:30)
-
定休日
不定休、年始
-
アクセス
熊本電鉄「藤崎宮前」駅すぐ