コトコトじっくり。時間をかけることで、美味しくなるシチューは、寒い季節のごちそうです。
今回はいつものシチューをランクアップさせるべくフレンチシェフに本格的なレシピを伝授してもらいました。
少しだけ手間暇はかかりますが、労に報いる美味しさは格別。
「ビーフシチュー」と「クリームシチュー」、2本立てでご紹介します。



温かな家庭を彷彿とさせる秋冬の定番国民食「シチュー」

寒い日に家に帰って、シチューの香りがすると幸せな気持ちになりませんか?
シチューは身体も心も、ほっこりと温め、癒してくれる国民食です。

ビーフシチューは文明開化とともに。クリームシチューは戦後から

 日本にいつシチューが伝わったのか?明確な記録はありませんが、明治4年、東京・九段の洋食亭「南海亭」のメニューには「シチウ」というメニューが記載されており、翌年に発行された仮名垣魯文著「西洋料理通」という料理本にも肉やトマトを用いたシチューが紹介されています。ちょうどその頃、日本ではじめて、タマネギなど西洋野菜の栽培がスタート。当時のシェフたちは、新たな素材を手に、異国料理に果敢に挑戦したのでしょう。明治の初期には小麦粉とバターでつくったブラウンソースに、赤ワインやトマトを加え、肉やじゃがいも、にんじん、タマネギなどを煮込んだシチューが洋食レストランの定番メニューとなりました。



 一方、クリームシチューはかなり遅れて誕生します。明治時代に牛乳は滋養があるとは知られていましたが、人々にとってかなり抵抗感がある飲み物でした。大正時代に入ると、ミルクホールやカフェーが全盛期となり、牛乳が一般庶民にも普及。しかしまだまだ高価な飲み物で、当時作られていたシチューに牛乳が使われることはほとんどありませんでした。大きな変化が訪れたのは戦後。困窮した国情の中、子どもたちへの栄養補給用に脱脂粉乳が使われるようになり、牛乳の代わりに脱脂粉乳を使った「白シチュー」が給食に登場。昭和41年にはハウス食品から粉末のルウ「クリームシチューミックス」が発売され、ヒット商品に!牛乳を使ったシチューが家庭の食卓でもポピュラーなメニューになりました。



 ちなみに「クリームシチュー」というのは和製英語で、日本発のオリジナルメニュー。海外では日本独特の洋食料理として紹介されているそうです。