長年愛され続ける一品を紹介してきた「あっぱれ!国民食」に引き続き、今号から「世界の国民食」を探求する新シリーズがスタートします。
初回は、日本でもおなじみの中華メニュー「麻婆豆腐」。
どこでどのように生まれたのか、どうしたら本場の味に近づくか、世界中の人々を魅了する中国四千年の食の秘密に迫ります。







“あばたのおばさん”として親しまれた女性が発明!

麻婆豆腐が誕生したのは今から約150年前の四川省・成都。ここに陳さんという店主が営む料理屋があったそうです。夫婦で店を営んでいましたが、主人が亡くなり、残された奥さんが考案したのが「麻婆豆腐」。当時彼女が住んでいた長屋の端に豆腐屋があり、食材が手にはいりやすかったというのも誕生のきっかけと言われています。
彼女がつくる「麻婆豆腐」は安くて美味しいと評判になり、顔にあばたがあったことから「麻=あばた」、「婆=おばさん」の豆腐=「麻婆豆腐」と呼ばれるように。つまり「“陳麻婆”がつくる豆腐料理」というのがメニュー名の起源です。当時の本には「店の屋号を知る人は多くないが“陳麻婆”の名前を知らない者はいない」と書いてあり、彼女が相当な有名人だったことがうかがえます。
日本で知られるようになったのは1970年代。四川省出身の料理人・陳健民氏が日本人に食べやすいようにアレンジして自身の店で提供したほか、NHKの料理番組「きょうの料理」で披露したことから一般家庭でも広がっていきました。


麻婆豆腐が生まれた四川。日本でもおなじみの料理がいっぱい

広大な国土を誇る中国。地方によって地理的条件や気候が異なり、食材も調理法も変化に富みます。なかでも日本でよく知られているのは、「東の上海」、「西の四川」、「南の広東」、「北の北京」といった四大料理と呼ばれるもの。“東は甘酸っぱい”“西は辛い”、“南はあっさり甘め”、“北は塩気が強い”のが特徴で、麻婆豆腐が生まれた四川は、火鍋や担々麺など辛い料理の宝庫です。このほか、エビチリやチンジャオロース、バンバンジー、回鍋肉など、日本で親しまれているメニューが多いのも特徴です。






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