突然の持ち込みは常識を疑われます

 レストランにワインを持ち込むことをBYO(Bring Your Own)と言います。私は持ちこむことはほとんどないのですが、お店の方から持ち込みに関する嘆きを耳にすることはよくあります。ワイン通の方々にとっては当たり前のことでしょうが、意外に持ち込みマナーを知らない人は多いそうですので、今回はそのことについて書いてみます。
 まず、お店に入るときに突然「これ、持ち込みでお願いします」と言うのは論外です。予約時など事前に持ち込みが可能かどうかを確認し、持ち込みの意志を伝えておきましょう。そしてそのときに持ち込み料も確認しておくとよいでしょう。持ち込み料はお店のグラスを使い、サーブしてもらう当然の対価ですが、お店によってその金額は様々です。もちろんどこでも買えるようなテーブルワインやお店にもあるワインを持ちこむのはいけません。なにか特別な事情があるワイン、あるいは高級なワインで、家では適切な状態で、グラス、それに見合う料理を準備できないといった場合にこそ持ち込みをするべきです。また、持ち込む場合は、できれば数日前に持参して、店で味を安定させておいてもらうとさらによいでしょう。



お店のスタッフへのお裾分けをお忘れなく

 持ち込みをした場合には、そのワインだけ飲むのではなく、別にお店のドリンクもオーダーしましょう。たとえば最初の乾杯をお店のビールやスパークリングワインでしたり、あるいは食後酒をオーダーするのもよいでしょう。
 また、帰るときボトルに1杯分ほど残しておいて、「よろしければ後で味見なさってください」と伝えるのも持ち込みのマナーの一つです。特にお店の方が飲んだことのない稀少なワインの場合は、とても喜ばれます。
 いろいろ書きましたが、マナーさえ守れば、何かの記念のワイン、いつか空けようと思っていた稀少なワインを楽しむのに、持ち込みはよいシステムです。機会があったら活用してみてください。あくまでも「持ち込ませてもらってる」という気持ちを忘れずに。
弓削聞平(ゆげぶんぺい)
福岡とグルメをテーマにフリーの編集者として活動。「epi」「ソワニエ」の元編集長。個人事務所「聞平堂」では「価格で探すご褒美ランチ」「気軽で楽しい町の寿司屋」等を発行。最新刊は「私、この店、大好きなんです。」。RKBラジオ「弓削聞平スマイルディッシュ」に出演中。