喜んでもらえたことを知るのは嬉しいもの
仕事柄、お店の方からときどき掲載お礼の手紙をいただきます。通常、雑誌やウェブに掲載しても、記事の反応を知る機会はあまりなく、リアルな感想や反応を聞けることはほとんどありません。それをわざわざことばにして送ってくださると、このうえなく嬉しいものです。アナログな手紙はもちろん、メールやSNSでも、具体的な反応を知ると、自分の仕事の意義というか、多少なりとも喜んでもらえたことや役立ったことを実感できて、勇気づけられます。飲食の仕事は私の仕事と違って、お客様と実際にお会いする仕事ですが、やはり最大の喜びはお客様が満足して帰られることです。以前、この連載で「おいしいと思ったら、口に出して伝えましょう」と書きましたが、店で伝える機会を逸したとき、あるいはより多くの、そして具体的な気持ちを伝えるために、一度家に帰ってから、手紙などを書いてみるとよいと思います。
お客の反応がスタッフのモチベーションをアップ
私自身、そんなにお礼状を書く方ではないのですが、料理や接客に感動して手紙を書くことはときどきあります。一通の手紙は、その小さな存在からは考えられないような大きな喜びになるらしく、お礼状をきっかけに親しくなった方も何人かいます。また、お客全体から見ると、お礼状を送る人はごくわずかですから、お客として記憶に残ることも間違いありません。もちろん記憶に残るために送るわけではありませんが、感謝の気持ちはできるだけ伝えるにこしたことはありません。本来なら毎回書くとよいのですが、せめて「いい会食だった」とか「いいお店に出会えた。また行きたい」と思えたときくらいはお礼状を書いてみませんか。ほんの数行の短いはがきでもいいんです。気負うことなく、さらっと書いてみましょう。スタッフが感じた喜びは彼らのモチベーションにつながり、さらなる店のレベルアップにつながるはずです。
弓削聞平(ゆげぶんぺい)
福岡のフリー編集者。ウェブマガジン 「UMAGA」編集長(https://umaga.net)。「ソワニエ」の元編集長。「ぐる〜り糸島」「私、この店、大好きなんです。」「福岡オンリーワン レストラン&ショップ」等を出版。