小倉を行き交う志士と郷土料理、ぬか炊き


 国を思う志士たちが江戸へ京へとせわしなく行き来した幕末。九州の玄関口であり、長崎街道の起点でもあった小倉は交通の要所として栄え、多くの人で賑わいました。鎖国政策下で唯一外国との交易を許された長崎へ通じ、坂本龍馬をはじめ、吉田松陰や西郷隆盛、伊藤博文らも通ったとされる長崎街道。小倉の常盤橋から長崎まで57里、約223㎞の道のりを、健脚だった当時の人は1週間ほどで歩いたといいます。小倉藩は1632年に小笠原氏が藩主になって以降、徳川譜代の大名となり、幕末を幕府軍として戦いましたが、小倉の宿では訪れた志士と藩士たちとが語らい、意気投合することもあったかもしれません。
 そんな小倉の宿でお膳に上ることもあったであろう料理が「ぬか炊き」です。ぬか炊きは、鰯や鯖などの青魚をぬか床(ぬか漬けを漬ける際のぬか味噌)を加えて甘辛く煮込んだ、江戸時代から伝わる郷土料理。家々で味は異なりますが、ぬか床に加えた山椒のピリッとした刺激と清涼感が特徴です。


①ひつじ
日本有数のカルスト台地「平尾台」(小倉南区)のイメージから作られたもの。平尾台の山肌に並ぶ石灰岩が羊の群れのように見えることから、一帯は「羊群原(ようぐんばる)」と呼ばれている。
厚さ4㎜の鉄の厚板をレーザーでカットした、北九州の鉄工技術から生まれた一品。溶かした鉄鉱石を叩き上げて冷やし固めた厚板は、鉄分の純度が高くて硬く、ぬか床の酸や塩分に触れても溶けたりせず、半永久的に使用が可能。
②バナナ
「門司港レトロ」の象徴、バナナ。交通の要所として栄えた門司港では大正時代初期にバナナの叩き売りが始まり、名物となった。
③北九州らしさを意識したレトロなパッケージ。7㎝×11㎝に収まる大きさで、1つ900〜972円。


伝統と技術を掛け合わせ今に役立つ一品が誕生


 小倉では家で代々受け継ぎ、百年を超すものも珍しくないというぬか床。ぬか床には昔から、なすの色を鮮やかにするため鉄釘や鉄屑などが加えられています。そして北九州市と言えば、1901年に操業を開始した官営八幡製鐵所を原点に発展を遂げた鉄の町。伝統のぬか床と鉄を組み合わせて、暮らしに役立つ北九州市らしい土産物ができないだろうか――。そこから生まれたアイデア商品がこの「鐡やづけ」です。市の象徴や野菜をモチーフにした鉄板は、ぬか床に入れるほか、黒豆を煮る時に加えると色鮮やかに仕上がります。

④ひまわり
北九州市の市花の一つ。8月上旬まで若松北海岸付近の畑で見られるひまわりは夏の風物詩にもなっている。
⑤うめ
太宰府天満宮の菅原道真公と飛梅の故事から、福岡県の県花に選ばれた梅。その花をかたどったもの。
⑥なす
昔からぬか床に鉄を加えるのは、なすの発色を良くするため。鐡やづけの中でも一番人気のデザイン。


 また最近では、不足しがちな鉄分の補給に有効であることからも注目されるようになりました。ごはんを炊く時に鍋に入れたり、お湯を沸かすやかんに入れれば、それだけで鉄分補給が可能です。


⑦炊飯やお湯を沸かす時、一緒に鐡やづけを入れるだけで鉄分補給に。鉄不足と言われる今、おすすめの使い方。
⑧こめ糠(ぬか)に塩や香辛料などを混ぜ込んで発酵させた、乳酸菌豊富なぬか床。
⑨そのぬか床を加えて青魚を煮た北九州の郷土料理、ぬか炊き。


鐡やづけの生みの親、波多野淳子さん。現在はぬか床に関する教室や講演のため、全国を飛び回って活躍中。

ぬか床処 槇乃家
鐡やづけを開発した、ぬか床、ぬか漬け、ぬか炊きの店
福岡県北九州市小倉南区長行西1-974-4
MAPはこちら→
TEL.093-452-2222
店休日/日・月・火曜
※ご来店の際は、営業時間をご確認ください。

※価格はすべて税込みです。