最先端の科学技術と人材を誇った佐賀藩

 幕末には雄藩と謳われ、多くの人材が明治新政府で活躍した肥前・佐賀藩。長崎警護に当たっていたため早くから外国事情に通じていた藩主・鍋島直正は、国内初の反射炉を築造して鉄製の大砲を鋳造。その技術は幕府からも依頼がくるほど先進的なものでした。一方で藩校を充実させ、開国後は他藩に先駆けて英学校を創設するなど、人材育成にも注力。そんな直正の薫陶を受けた一人が早稲田大学の創始者としても知られる大隈重信です。
 維新当時、長崎の英学校で教鞭もとっていた大隈ですが、語学力や交渉術を新政府に見込まれ、明治元年には東京へ。その後は伊藤博文らとともに新政府の基礎を作り、内閣総理大臣を二度務めたほか、様々な功績を残しました。


①駅前まちかど広場の大隈重信モニュメント。佐賀県では2019年1月14日まで「肥前さが幕末維新博覧会」を開催中。
②鶴屋の二代目が天和年間(1681~1684年)に長崎で南蛮渡来の製法を学び持ち帰ったと伝わる丸房露。現在も手作業で製造されている。



大隈重信も贔屓にした老舗菓子店の伝統と挑戦

 自信家で負けず嫌い、剛毅な人物といわれる大隈ですが、意外に甘いもの好きでもあったよう。明治29年(1896年)に佐賀へ帰郷した際、藩の御用菓子司であった「鶴屋」を訪ね、そこで食した丸房露の味に感激。東京へ戻った後もあまりの食べたさに当主を自邸へ呼んで焼かせたという話が伝えられています。
 鶴屋の創業は寛永16年(1639年)。当時の藩主から御用菓子司を仰せつかっていた鶴屋に丸房露が誕生したのは1680年代のこと。以来330年以上もの間、素朴な味はそのままに、昨年からは佐賀の食材を使ったアイスクリームやマーマレードなど、丸房露のおいしさをより一層引き立てる新商品を開発。「温故知新」を信条に、古きも新しきも活かす挑戦を続けています。


①材料は小麦粉、卵、砂糖、蜂蜜、重曹と、とてもシンプル。牛乳に浸したり、軽くトーストしてバターを塗って食べるのもおすすめ。丸房露1個80円、5個入り432円~。
②佐賀県産の柑橘「クレメンティン」を使い、丸房露に合うよう甘さ控えめに仕上げたマーマレード。90ml 540円。
③鶴屋に伝わる菓子製法書。左のマーマレードはこの中の「三柑潰様」のレシピを元に復刻したもの。
④その昔、城に納める時に使われていた桶の蓋。「御用」の文字は藩主御用達である証。
※価格はすべて税込みです。





御菓子司 鶴屋
今年、創業379年を迎えた南蛮菓子の老舗。
佐賀県佐賀市西魚町1番地
TEL.0952-22-2314
営業時間/9:00~19:00
店休日/元日

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