アンドロゴ_トップページリンク アンドロゴ_トップページリンク 春号 No.197

九州 老舗名店探訪

長年愛され続ける名店を訪ねて
熊本市

紅蘭亭 下通本店

三度の窮地を乗り越え91年
どんなときでも新しい一歩を踏み出す
紅蘭亭 下通本店
▲熊本市内中心部の下通りアーケード内にお店を構える
▲オープン当初の紅蘭亭。竜宮城を模して造られた▲オープン当初の紅蘭亭。竜宮城を模して造られた
▲創業者の葉菊華さん▲創業者の葉菊華さん

昭和9年に熊本で開業
竜宮城を模した華やかな店

時代は第二次世界大戦の真っただ中。空襲で一面焼け野原の熊本市街地。誰もが希望を失っていたとき、多くの人々を救ったのは葉菊華(ようきっか)さんが作るカボチャの「チャプスイ(野菜と肉または海鮮を炒めて、片栗粉でとろみをつけた料理)」だった_。

そんな逸話の残る葉さんが創業した老舗中華料理店「紅蘭亭」。1934年(昭和9)年に熊本市(現在の栄通り付近)で店を始め、開業当時の外観は竜宮城を模した華やかな造りだったそうです。

その後、第二次世界大戦の空襲により熊本市街地は焼け野原となり、店も焼失しました。付き合いのあった警察署長の依頼で、当時唯一手に入ったカボチャで「チャプスイ」を販売することに。上通町に店を再建した後、1958(昭和33)年に下通店(現在の下通本店)をオープンしたのです。

▲オープン当初の紅蘭亭。竜宮城を模して造られた ▲創業者の葉菊華さん ▲1958(昭和33)年ごろの紅蘭亭 現在の下通り店と同じ場所

熊本地震にコロナ渦…
苦境の中、新な挑戦が始まる

創業から82年目の2016年4月。熊本地震が発生し、被災した下通本店は長期休業を余儀なくされました。およそ4年の歳月を重ね、ビルを再建。2020年5月に待望の営業再開をしましたが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で思うように営業ができず、飲食業界全体の将来性も不透明な状況となりました。そんな窮地にありながらも「熊本に寄り添い、人を、街を元気にしたい」という思いで、新たな取り組みをスタート。鉢盛りやオードブルといったテイクアウトを強化しました。

さらに2024年4月には、コロナ禍中に開発を進めていた「インスタント太平燕(たいぴーえん)」を発売。鍋一つで調理可能な仕様となり、自宅用や贈り物として、より手軽に熊本の味を楽しめるようになったのです。

店内で販売されている「インスタント太平燕」「鶏ガラ豚骨味(写真手前)」1,188円(税込)、「ゆず塩味」1,296円(税込)
店内の様子
▲テーブルや椅子はゆったりとした間隔で配置され、落ち着いた雰囲気
「太平燕」1,080円(税込)▲「太平燕」1,080円(税込)

今や熊本のソウルフードとも言われる「太平燕」。つるんとした春雨を鶏ガラと豚骨でとったスープ、たっぷりの野菜とともに味わう、ヘルシーで栄養満点なご当地ヌードルです。

「紅蘭亭」では、緑豆100%の春雨と天日干しの福建天然塩を使用。虎皮蛋(ふーひーたん)と呼ばれる揚げ卵が入っています。具材のエキスがスープに溶け込み、滋味に富んだ味わい。たっぷりの野菜、海鮮、春雨とヘルシーながら食べ応え抜群です。

他にも、「酢排骨(すーぱいこ)定食」や「小籠包(しょうろんぽう)」など、定食も一品メニューも充実しています。

▲「太平燕」1,080円(税込)
▲「酢排骨(すーぱいこ)定食」1,340円(税込)
▲上海蟹みそ入りの「小籠包」400円(税込)

店内はこれまでの歴史の深さを物語るように、創業者が集めた骨董品が飾られています。

現在では3代目の葉山耕司さんが新しい挑戦を続けています。2024年にはブラジルで行われた日本文化イベントへ足を運び、地球の裏側で「太平燕」を調理し、多くの人を喜ばせたそうです。

▲ブラジルで行われた日本文化イベントに、熊本県人会として参加した現社長の葉山耕司さん

戦災、地震、コロナ渦…。窮地に立たされるたびに原点に立ち返り一歩を踏み出す。これからも「紅蘭亭」は、食文化を創造し、守りつないでいくのです。

2020年のリニューアルの際、創業者・葉菊華さんが集めた骨董品を壁の装飾に使用 さまざまな骨董品が店内装飾のアクセントになっている 「寿」という漢字を基にした伝統的な文様の一つ「寿字紋」が椅子に施されている
紅蘭亭 下通本店の地図

紅蘭亭 下通本店

※掲載している情報は、2025年2月25日時点のものです。