九州 老舗名店探訪
レストラン蜂の家(はちのや)
珠玉のカレーとハイカラスイーツ



終戦後の混沌とした時代に
兄弟ふたりで喫茶店を創業
1948(昭和23)年、佐世保で開業した「蜂の家」。平倉太刀雄(ひらくらたちお)さんと弟の田渕春雄(たぶちはるお)さんが、兄弟で創業したコーヒ店です。蜂は、遠く離れた場所からでも巣に帰れるそうです。戦後の混沌の中、出稼ぎなどで遠く離れゆく方がいつでも帰ってこられる場所にしたい。店名にはそんな思いが込められています。
当時、食事として提供したのが、今も看板メニューの一つであるカレー。兄の太刀雄さんが東南アジアでスパイス料理に出合い、日本人の味覚に合うように研究を重ねて創作したのが、蜂の家の欧風カレーです。


一方、フランス料理に精通していた弟の春雄さんが手掛けたのは、シュークリーム。1953(昭和28)年に発売するとたちまち街の話題となり、店は“ハイカラ”なデートスポットとして人気を博しました。



ふんわり生地の中に、たっぷりのカスタード。当時は貴重で高価だったバナナや、焼きリンゴもイン。焦がしキャラメルソースである特製の「スカッチソース」をかけていただきます。
手の込んだシュークリームですが、誕生秘話があります。実は、春雄さんが妻の気を引きたい一心で作っていたのです。このエピソードはご家族も知らず、ご夫妻が亡くなった後に判明したそう。そして、春雄さんが妻にささげたシュークリームであることから、後に「女王シュークリーム」と呼ばれるようになりました。



3日前までに要予約
創業者の思いを受け継ぎ
“変わらないこと”に挑戦
創業から77年たった現在。欧風カレーは、「長崎和牛サイコロステーキカレー」などトッピングも10種以上。時間をかけてあめ色になるまで炒めた玉ねぎの甘みに、数十種のスパイスの香りや辛みが際立つ自慢の味です。また、佐世保名物の「長崎和牛レモンステーキ」をはじめ、洋食メニューもそろっています。



「女王シュークリーム」には、通常の10倍、約2㎏もある「軍艦シュークリーム」という巨大サイズも。30年ほど前、「蜂の家のシュークリームが大好きな母の誕生日に」と、一人のお客さまが特別オーダーしたことから生まれました。
シュークリームを手に笑顔を見せるのは、春雄さんの孫であり店を守る寛行(のぶゆき)さんと妹の真央(まお)さん。大切にしているのは、自分たちが生まれる前からある店の味をつないでいくこと。そのために、“変わらない”ことに挑戦し続けています。戦後から街に根付き愛され続けている「蜂の家」。三世代に渡って通うお客さまもいるほどです。「就職などでこの地を離れる人がいても、安心して帰れる場として在り続けたい」と寛行さん。創業者が店名に込めた思いは受け継がれ、未来へと紡がれています。


レストラン蜂の家
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住所
長崎県佐世保市栄町5-9
[ GoogleMap ] - 電話
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営業時間
11:30~20:30(LO19:45)
※14:30~17:30は喫茶のみ -
定休日
不定休、年末年始
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アクセス
JR「佐世保駅」より徒歩約15分
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