その姿が現れると、現場の空気が変わる。活気が生まれ、経験と鍛錬に裏打ちされた技術の高さに、若手工事士は「いつかはこのようになりたい」と憧れる。それが、吉川さんだ。
入社したのは20歳のとき。「叔父が工事士だったので興味はあった」と語るが、いざ仕事を始めると、怒涛のような日々だった。忙しい現場ばかりをあちこち任され、手には大きな豆ができた。「あれを持って来い」「これを運べ」と言われるままに動き回った。そのうち、早く認められたい、自分でさわりたいと思うようになり、先輩に「させてください」と訴えた。だから最初に「やってみろ」と任されたときは嬉しかった。